T 趣旨
今後の本格的な高齢社会の到来を控え、公的年金を土台としつつ、老後の備えに対する自主的な努力を支援していくことが必要である。このため、既に提案した確定拠出型の年金制度の創設に加え、確定給付型の企業年金についても、受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、統一的な枠組みの下に必要な制度整備を行う。
U 概要
- 確定給付型の企業年金について、積立基準、受託者責任、情報開示等統一的な基準を定め、これを満たすものについて承認を行い、あわせて税制措置の整備を行う。
- 厚生年金基金については、厚生年金の代行を行わない他の企業年金制度への移行を認める(規制緩和)。
- 新規の適格退職年金契約は認めず、既存のものは一定の十分な経過期間を設け、他の企業年金制度に移行する。
V 企業年金法
受給権保護等を図るため、新たに企業年金法(仮称)を制定する。
1 制度の枠組み
<基本的な仕組み>
契約方式
労使が合意した年金規約に基づき、企業と信託会社・生命保険会社等が契約を結び、母体企業の外で年金資産を管理・運用し、年金給付を行う企業年金
基金方式
母体企業とは別の法人格を持った基金を設立した上で、基金において年金資産を管理・運用し、年金給付を行う企業年金(厚生年金の代行は行わない)
※
契約方式、基金方式のスキーム図は別紙に添付。
@ 制度の開始
- 企業年金を実施しようとする企業は、労使の合意に基づき、制度の内容を規定した年金規約を作成し、主務大臣の承認(基金の場合は基金の設立認可)を受ける。また、複数企業により、規約を定めることができるものとする。
- 契約方式の場合は、企業は、掛金の払込み及び積立金の管理などに関する契約を信託会社・生命保険会社等と締結しなければならない。
<年金規約に規定する主な内容>
- 受給資格に関すること
- 給付内容・方法に関すること
- 掛金負担に関すること など
A 対象者・加入者資格
(1)対象者
(2)加入者資格
- 年金規約において、加入者資格を定めることができる。
その場合、加入者資格は特定の者について不当に差別的なものであってはならない。
B 給付
(1)給付の内容及び支給要件
(老齢給付)
- 加入者等の老齢を事由に、年金給付を行うものとする。
- 年金給付は、支給開始年齢から少なくとも5年にわたって支給するものとする。
- 支給開始年齢は、原則として、60歳から65歳の範囲で年金規約に定めるものとする。
- 年金給付の受給資格期間は20年を超えてはならない。
- 本人の選択により、年金給付に代えて一時金を支給することができる。
(脱退一時金)
- 加入期間が3年以上の者については、年金給付が受けられない場合、脱退一時金を支給するものとする。
(障害給付・遺族給付)
- 加入者等が高度障害又は死亡した場合には、それぞれ障害給付又は遺族給付を行うことができる。
(2)給付の基準
- 年金給付及び一時金の額は、定額又は給与及び加入期間その他合理的な基礎に基づいて算定されるものでなければならない。
- 給付は、加入年数や給与等に照らし、特定の者について不当に差別的なものであってはならない。
C 掛金
- 事業主は、年金給付及び一時金たる給付に要する費用に充てるため、掛金を拠出しなければならない。
- 掛金は、事業主負担を原則とし、本人拠出については、年金規約で定める場合に、加入者本人の同意を前提として可能とする。
D 資産運用
- 年金資産の運用は、安全かつ効率的に行われなければならない。
- 資産運用は、原則として、信託会社、生命保険会社、投資顧問業者等が行う。
- 資産の管理運用の体制が整っていること等の条件のもとに、基金は自ら資産運用を行うことができる。
E 制度の終了
- 制度は、次の場合に終了(解散)する。
(1)事業主と加入者等が、制度の終了について一定の手続きを経て合意し、主務大臣の承認を得た場合
(2)母体企業の破産等により継続不能となった場合
(3)主務大臣が規約の承認又は基金の設立認可を取り消した場合
- 残余財産は加入者等に配分し、事業主への返還は認めない。
2 受給権保護
@ 積立義務
(積立て義務)
- 事業主等は、将来にわたって約束した給付が支給できるよう、年金資産の積立を行わなければならない。
(財政再計算及び財政検証)
- 企業年金は、少なくとも5年に1度、将来にわたって年金財政の均衡が図られるよう財政再計算を行う。
- 企業年金は、各事業年度末の決算において、@年金財政が予定通り推移しているかどうかや、A仮に今、企業年金が終了した場合に、過去期間分の給付に見合う資産が確保されているかどうかを検証する。
-
財政再計算及び決算の結果は、年金数理の専門家の確認を経て、主務大臣に届け出るものとする。
(積立不足の解消等)
- 積立不足が生じた場合には、一定期間内に不足が解消されるように掛金を拠出しなければならない。
- 積立金に剰余が生じた場合には、財政運営の安定を図る観点から、制度内に留保するものとし、事業主への返還は行わない。
なお、積立金が、運用環境等の変化に備えて安全を見込んで設定する一定の限度を超えた場合には、超過額に応じて、掛金を減額又は停止するものとする。
(特例的措置)
- 加入者数が一定以下の企業年金については、事務負担の軽減等の観点から、選択肢として、財政再計算等のための簡易な基準を設定する方向で検討する。
A 受託者責任
- 加入者等の受給権保護を図る観点から、事業主等企業年金の管理・運営に関わる者について、加入者等に対する忠実義務、分散投資義務などの責任を規定するとともに、利益相反行為の禁止などの行為準則を明確化する。
B 情報開示
- 事業主等は、加入者等に対し、年金規約の内容を周知しなければならない。
- 事業主等は、掛金納付状況、資産運用状況、財務状況について加入者等への情報開示及び主務大臣への報告を行わなければならない。
3 制度間の移行
@ 確定給付型の制度間の移行
- 契約方式、基金方式、厚生年金基金各制度間で、制度を移行し、年金資産を移換することができる。
A 確定拠出年金制度への移行
- 契約方式、基金方式の年金資産を個人ごとに分配し、確定拠出年金(企業型)へ移換することができる。
4 その他
W 税制措置
- 税制措置は次の通りとする。
- 拠出時:事業主拠出は全額損金に算入する。本人拠出は生命保険料控除の対象とする。
- 運用時:一定水準以下は非課税とする。
- 給付時:課税(年金の場合は公的年金等控除を適用し、一時金の場合は退職所得課税を適用する。)
- 企業年金が制度間の移行を行う場合に、年金資産を移換するときは、税制上の措置を継続する。
- その他関連税制について、所要の措置を講じる。
X 既存制度の取扱い
1 適格退職年金の取扱い
- 新規の適格退職年金契約は認めない。
- 既存の適格退職年金については、一定の十分な経過期間を設け、他の企業年金制度に移行するとともに必要な経過的措置を講じる。
2 厚生年金基金制度の見直し
- 企業年金法の制定に伴い、厚生年金基金の受給権保護の規定等についても必要な見直しを行う。